梅の花が縁起がいいと言われる理由とは?

まだ寒さの残る早春、他の花に先駆けて凛と咲き誇る梅の花。
古くから日本人に愛されてきた梅は、松や竹と並んで「松竹梅」として知られる縁起物のひとつです。
では、なぜ梅の花は縁起がいいとされているのでしょうか。
その理由は、梅が持つ「生命力の強さ」「中国から伝わった吉祥の象徴」「学問の神様との深い縁」など、さまざまな歴史的・文化的背景に由来しています。
この記事では、春を告げる花として親しまれる梅の花が縁起物とされる理由を、歴史や伝説、花言葉などの観点から詳しく解説します。
梅の花が縁起がいいとされる5つの理由
梅の花が縁起がいいとされる理由は、大きく分けて以下の5つが挙げられます。
1. 厳しい寒さの中で一番に咲く「春を告げる花」だから

梅の花が咲くのは、1月下旬から3月頃。まだ冬の寒さが残る時期に、他の花に先駆けて一番早く花を咲かせます。
雪が残るような厳しい環境の中でも、美しい花を咲かせる梅の姿は、新しい季節の始まりや希望の象徴として捉えられてきました。「百花魁(ひゃっかさきがけ)」という言葉があるように、真っ先に春の訪れを知らせる梅は、新年や新生活のスタートにふさわしい縁起の良い花とされています。
また、旧暦で正月を祝っていた時代、新年を迎える時期(現在の暦で2月上旬頃)は、ちょうど梅の花の開花時期と重なっていました。雪が積もる寒さの中で新年を祝うように咲く梅の花は、大変縁起が良いものとして大切にされてきたのです。
現代でもお正月を「新春」と呼んだり、年賀状やお年玉袋に梅の柄があしらわれているのは、梅の季節にお正月を祝っていた名残といえるでしょう。
2. 「松竹梅」=歳寒三友として中国から伝わった吉祥の象徴だから
梅が縁起物とされる大きな理由のひとつに、中国から伝わった「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」という概念があります。
歳寒三友とは、松・竹・梅の3つの植物を指し、中国の宋の時代(10〜13世紀頃)に文人画の画題として好まれるようになりました。
- 松:寒い冬でも葉を落とさず青々としている
- 竹:厳しい寒さの中でも緑を保ち、まっすぐに伸びる
- 梅:厳冬の中でいち早く花を咲かせる
これら3つの植物は、厳しい環境にも負けない強さを持つことから、「清廉潔白」「節操」といった文人の理想を表すものとされました。
日本には平安時代に伝わり、江戸時代以降に民間でも広く知られるようになります。ただし、日本では本来の中国の意味とは少し異なり、「おめでたいこと」の象徴として定着しました。
慶事や祝いの席で「松竹梅」が使われるのは、この歳寒三友の概念が元になっています。ちなみに、松竹梅には本来、優劣や順位はありません。寿司屋などで「松・竹・梅」がランク付けに使われるようになったのは後の時代のことで、本来は3つとも同等に縁起の良いものとされています。
3. 学問の神様・菅原道真と「飛梅伝説」に由来するから
梅が縁起物とされるもうひとつの重要な理由が、平安時代の貴族・菅原道真(すがわらのみちざね)との深い縁です。
菅原道真は、幼少期から学問に秀で、右大臣にまで昇りつめた平安時代の政治家であり学者です。
しかし、901年(延喜元年)、藤原時平との政争に敗れ、無実の罪で九州の大宰府に左遷されてしまいます。
京都を離れる際、道真は日頃から愛でていた庭の梅の木に、次のような有名な歌を詠みました。
「東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」
(意味:東風が吹いたら、その風に乗せて香りを届けておくれ、梅の花よ。主人である私がいなくなっても、春を忘れないでおくれ)
この歌に応えるかのように、道真を慕った梅の木は一夜にして京都から大宰府まで飛んでいったという伝説が残されています。
これが有名な「飛梅(とびうめ)伝説」です。
現在も太宰府天満宮の本殿前には、樹齢1000年を超えるとされる「飛梅」が御神木として大切に守られており、毎年境内で一番早く花を咲かせて参拝者を楽しませています。
参考:飛梅|太宰府天満宮公式ホームページ
この伝説から、梅は「人の心に寄り添う花」「真心と絆を象徴する花」として親しまれるようになりました。
また、菅原道真が学問の神様として祀られていることから、梅は学問成就や合格祈願の縁起物としても大切にされています。
4. 紅白の花色がおめでたさを象徴するから
梅の花は、大きく「紅梅」と「白梅」に分けられます。
紅と白という色の組み合わせは、日本において古くから「おめでたさ」や「調和」を表す縁起の良い色として重んじられてきました。
| 種類 | 色 | 花言葉 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 紅梅 | 紅・ピンク | 優美、艶やか | 華やかで明るい印象 |
| 白梅 | 白 | 気品、上品、澄んだ心 | 清楚で凛とした印象 |
正月飾りや祝いの席で紅白の梅を組み合わせて飾るのは、新しい年に福を招き入れる願いが込められています。
紅白饅頭や紅白の幕などと同様に、梅の紅白の花も日本人にとって特別なおめでたさを感じさせる存在なのです。
5. 生命力の強さが「長寿」「厄除け」を連想させるから
梅の花は、他の植物がまだ眠っている厳しい寒さの中で花を咲かせます。
この生命力の強さから、梅は長寿や健康、厄除けの象徴として捉えられてきました。
また、梅の実を使った梅干しには殺菌作用や解毒作用があることが古くから知られており、「梅は三毒を断つ」という言い伝えがあります。
三毒とは「食の毒」「血の毒」「水の毒」を指し、梅干しを食べることで体の不調を整えるとされてきました。
このように、花としての縁起の良さに加え、実の健康効果からも、梅は病気を退け、長寿をもたらす植物として大切にされてきたのです。
梅の花言葉からわかる縁起の良さ

梅の花が持つ花言葉からも、縁起の良さがうかがえます。
梅全般の花言葉
- 忠実:飛梅伝説に由来。主人を慕って飛んでいった梅の姿から
- 高潔:厳しい寒さの中でも清らかに咲く姿から
- 忍耐:冬の寒さに耐えて花を咲かせることから
- 不屈の精神:逆境に負けない強さから
- 気品:上品で美しい花の姿から
西洋でも梅には「fidelity(忠実)」「Keep your promise(約束を守る)」「beauty and longevity(美と長寿)」といった花言葉がつけられており、世界的にもポジティブな意味を持つ花として認識されています。
なお、梅の花言葉には怖い意味はありません。
開花時期が卒業や別れのシーズンと重なることから、怖い意味があると思われることもあるようですが、実際にはすべて前向きで縁起の良い花言葉ばかりです。
元号「令和」の由来にも梅が登場
梅が日本文化において重要な位置を占めていることを象徴する出来事として、2019年に制定された元号「令和」があります。
令和の出典となったのは、日本最古の歌集『万葉集』に収録されている「梅花の歌三十二首」の序文です。
730年(天平2年)の正月、九州の大宰府で当時の長官・大伴旅人(おおとものたびと)が自邸に役人たちを招いて開いた「梅花の宴」。
その情景を記した序文に、次のような一節があります。
「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」
(意味:初春の良い月で、空気は心地よく風は穏やかである。梅は鏡の前の白粉のように白く咲き、蘭は匂い袋のように香っている)
この文から「令月」の「令」と「風和ぐ」の「和」をとって「令和」という元号が生まれました。
梅の花が咲く美しい春の情景が、新しい時代の名前の由来となったのです。
また、『万葉集』には梅を詠んだ歌が118首収録されており、これは桜よりも多い数です。
奈良時代の人々にとって、春を代表する花といえば梅であり、梅を愛でる文化が当時から深く根付いていたことがわかります。
正月飾りや縁起物として梅を取り入れる方法

現代でも梅は縁起物として、さまざまな場面で取り入れられています。
正月飾りとして
門松やしめ縄の飾りに梅の枝や紅白梅の意匠が添えられることがあります。
松や竹と組み合わせて飾ることで、より縁起の良い正月飾りになります。
生け花やフラワーアレンジメントとして
梅の枝を花瓶に活けて飾るのは、正月から立春にかけての季節にぴったりです。
苔梅(枝に苔が生えた梅)は「長寿」や「繁栄」を象徴し、雲龍梅(枝がうねるように曲がった梅)は個性的な姿が人気です。
贈り物として
梅の花は「忠実」「気品」などの花言葉から、卒業や送別会、新たな門出を祝う贈り物としても適しています。
また、学問成就を願って受験生へ贈るのも縁起が良いとされています。
日常に取り入れる方法
- 梅柄の食器や小物を使う
- 梅の香りのアロマやお香を楽しむ
- 盆梅を飾って季節を感じる
- 梅干しや梅酒を手作りして健康を願う
まとめ

梅の花が縁起がいいとされる理由は、一つではありません。
厳しい冬に春の訪れを告げる生命力の強さ、中国から伝わった「歳寒三友」としての吉祥の象徴、学問の神様・菅原道真との深い縁、紅白のおめでたい色合い、そして健康をもたらす梅の実の効能まで、さまざまな要素が組み合わさって、梅は古くから日本人にとって特別な縁起物となっています。
元号「令和」の由来となったように、梅は古代から現代に至るまで、日本の文化と深く結びついてきた花です。
まだ寒さの残る早春に、可憐な花と芳しい香りで春の訪れを知らせてくれる梅の花。
その姿に、新しい季節への希望と、困難に負けない強さを感じ取り、縁起物として大切にしてきた先人たちの想いが伝わってきます。
梅の花を見かけたら、ぜひその縁起の良さと歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。